「中年の危機」は過去より心理学として研究されており、中年期に限らず「人生の精神的段階」については欧米よりインドや中国の方が体系的に捉えられていたようです。
しかし現代の欧米では「中年の危機」「Midlife Crisis」についてはかなり浸透しているようで、
40代の同僚がおかしな言動をしたら「あいつはMidlife Crisisかもしれないぞ(笑)」と面白半分、食いつきがかなりいいようです。
以下に心理学や文献を参考に真面目に説明をしていきます。
・20~30代:社会の作った価値観に沿って学習・成長し、他者との関係を築きながら社会に適応して自分自身を形成する期間になります。
・40代以降:「自分の人生観、生き方」「後悔しない生き方をしているか?」等に目が向き始めることが「中年の始まり」「中年の危機」となります。
つまり30代までは社会に自分が合わせる期間、40代以降は自分自身を意識する期間となり、正反対の状況に置かれることになります。
これはユングの言っている40才前後が「人生の正午」であることと同じ意味となります。
・西洋心理学では精神的成長は、「幼児期~青春期」における心身の発達と精神的自立が大きな課題と捉えられており、成人した音には心理面も問題はないと考えられていました。
社会の基礎を支える中年層はそれだけ社会的信頼が高く、精神的に安定しているべきと思われていたようです。
・一方、東洋では人の成長は一生涯に渡って続くと考えられてきました。(これは中年には救いの言葉です)
インド ヒンドゥー教「四住期」:
- 学生期
- 学住期(仕事、結婚、子育て)
- 林住期(子育て完了し、一旦社会から離れる)
- 遊行期(老後)
孔子「論語」:
- 30にして立つ
- 40にして惑わず
- 50にして天命を知る
①男性42才厄年(本厄):42才がまさに「中年の危機」にあたると思います。
昔であれば42才は体力、仕事、家庭で最盛期から下降に転ずる年齢です。
そこで人生の「有限性」を視野にいれてその後の人生を再構築する必要があったと思われます。
人生100年時代の今の42才は下降に転ずる年齢ではありませんが、体力の衰え、仕事の限界、家庭での立ち位置など変化のある時期であることは間違いありません。
同様に人生の「有限性」を感じて「中年の危機」に陥る可能性は強いと考えられます。
②女性33才厄年(本厄):33才は昔は末子の出産期だったようです。出産後子供の手がかからなくなるので10才くらいだとすると42,3才に子供が離れることによる喪失感(空の巣症候群)で「中年の危機」になることは、合っている気がします。
- 身体感覚の変化:体力の衰え・体調の変化
- 時間的展望のせばまりと逆転(死の側から自分の余命を考える事)
- 仕事における限界感の認識
- 老いと死への不安
- 肯定的変化:自己確立感・安定感の増大
上記の変化を感じる事で「中年の危機」に陥って、迷子になってしまうと考えられています。
(迷子の中年おじさん・・なんて救いようがない感じですね・・。)
この迷子の中で「自分の内面を充実させたい願望」を手繰り寄せて、動じない自信と安定感が身につくことは加齢による人生の実りであると言われています。
つまり「中年の危機」を乗り越えると、人生の明るい展望が見えてくるということです。
40才前後の中年期を「人生の正午」と位置付けています。
40才は太陽が頭上を通過する位置にいて、40才を境に「影」が逆方向に映し出されるということ。
・前半(40才以前):学習、仕事、結婚、子供等「対外的な自己確立」
・後半(40才以降):学習、仕事、結婚、子供がひと段落して自分の内的欲求や本当の自分の姿を見出して実現す「自己実現の過程」
⇒後半は対外的にては下降局面に入りますが、「自己実現」により内面的には上昇していくと考えられます。
この中年の「自己実現」は、若者の自分探し、自己実現のような成長過程の話ではなく、自己について死ぬ時に残せるもの等、人生全体から生き方を見直す事です。
しかしこの「自己実現」は相当な意識的な自我の関与なくしては成し遂げられない、とのことです。
どの程度難しいかはこれからの取り組み次第ですね。
Wikipedia「ユング(本名:カール・グスタフ・ユング)」」
人は一生のうちのどの段階にあっても
「自分に何ができるのか?」
「自分はどんな存在なのか?」
という2つの大きな命題を心の中に持っています。
中年になって、色々なきっかけでこの2つの命題が大きく目の前に立ちふさがるということが「中年の危機」でもあると考えています。
この2つの命題を本気で考え始めには山に籠って修行たり、出家しないといけなさそうな感じになりますが、身近なところから家族を中心に「自分」と言う存在を考えてみてもよいと思います。
私自身は「中年の危機」になってから、妻、子供、親、兄弟との過ごし方や接し方についてこれまで以上に考えるようになりました。
残された人生をできるだけ後悔しないように、穏やかに思いやりを持って過ごして行きたい、というのが人生の最優先事項になっています。
引用、参考文献
・ライフサイクルの心理学 -こころの危機を生きる- 燃焼社