「フッン、フンッ」
「フンッ、フンッ」
さっきから頻繁に隣から音がする。愉快な音では無いのですぐにこの異音は無くなるだろうと希望していた。しかし異音は続いている。
同じ車両で何かオモロイ事が起きてて、それを見ていた反応でついつい鼻から息が出てしまったのだろうか?
最初はそう思っていたが、そんなに立て続けにオモローな事は起きていない。
そんな中隣人は意外と落ち着いていて異音が鼻から聞こえるだけ。フンッ!フッン。3分以上はフンフンしている。
鼻息である事は間違いなさそうである。しかしこんなにフンフンする用事があるのか?
鼻に異物が詰まっていたとしてもフンフンしたら、それが飛び出して当人や下手したら周りにも被害が及ぶだろうし、何より鼻から異物を出すという行為は、大衆の面前でやっちまう事の恥ずかしいNo.5くらいに入ると思っているので、流石にティッシュ無しではフンフンしないはずである。
そんな事を考えながら、この不愉快なフンフンを忘れるために違う事を考えようと必死になってみたが、やはりフンフンに思考を邪魔されてフンフン劇場に引き戻されてしまう。
こんな知りもしない変人隣人のフンフンに自分の思考、時間を左右されるなんてもったいなくて悔しい。
「フンッ、フンッ、してますけど大丈夫ですか?周りに迷惑だし、普段からやっているなら周りの人に嫌われていますよ!」
と言い放っている勇気ある自分を妄想してみる。圧倒的有利な立場で護衛がいればそんな発言もできるだろうが所詮は妄想である。
おそらくその人の単なる癖だと思う。緊張からくるものなのか、あるいは逆でリラックスしているが故に出てしまう癖かもしれない。
重要なのは本人が、自分がフンフン劇場を開催していることに気がついているかだ。
気がついた上でこんなにフンフンしているのであれば罪は深い。周りの人間にかけている精神的ダメージが意外と大きいからである。もし毎日四六時中フンフンしていたら家族、職場の人間は慣れるかもしれないが、蓄積されたストレスの行き先を作れずとても耐えられない。
本人が気がついていないとしたら、本人も周りの人間も不幸である。口臭にも当てはまるが、可哀想である。
口臭なら最近は周知の公害と認識されてきているのでけの方法は自分次第だが、フンフン劇場のケア方法は未領域である。AIのロボットがいてくれれば遠慮なく本人に伝えてくれるのだが…