雇われ会社員なので一緒に仕事をする人間を選ぶことができない。嫌いな人とも仕事をしなければいけない(辛い・・)。それどころか仕事をする場所、仕事の内容も含めて会社の関係事項はほとんど自分で決めることができない。
更には会社決定の辞令一つで異動させられ、行きたくもない場所、したくもない仕事を課せられることになる。会社員の運命である。
最近、有名メーカーの取締役と打ち合せする機会に恵まれた。打ち合せ前はどんなに怖い人なのかと警戒していたが、話の分かる良い方でした。
お互いの言い分がガチンコでぶつかっていた案件なので難航するかと思っていたが、こちらの都合、先方の都合を上手にバランスよく整理してくれた。つまり弊社へは言うことは言うし、先方としても担当では言えないような条件を出してくれたのである。話の流れの中でお互いの譲歩レベルをある程度合わせてくれて、お互い納得のできる「落としどころ」を出してくれたのである。
今回は交渉という程のレベルの高い話ではなかったが、通常の交渉事では余程斬新な発想がない限りはどちらかが譲歩しなければ着地点は見いだせない。WINWINの関係とはほとんどの場合きれいごとである。
この取締役だが年齢もそんなに高くなく、今後も偉くなりそうな感じもしたので、打ち合わせ中にこっそりとスマホで経歴を調べた。有名メーカー取締役だけにネットでインタビューや地方記事などが散見された。国内では東北勤務、海外ではアジア勤務など短い期間で色々な場所で様々な仕事をされていたようだ。
お試しの異動や無理難題を出されたり、単身赴任したり、家庭を犠牲にしてきたりを経てきた会社員人生と想像できる。苦労を重ねたためか、もともとの性格なのか非常に温和できっちり意見を持っていて屈託のない方でした。男の苦労は顔にでると言われれるが、ぱっと見は少し怖いが、話す口調は柔らないし、時々見せるにこやかな表情が場を和ませてくれた。
おそらくは社内では、鬼の側面もあるのだろうが今回は一切そのような部分は見られなかった。立場もあることからあえて脅しの交渉カードはおくびにも出さなかった。それも好印象であった。
会社の辞令ひとつでいろんなところに異動させられて、苦労もあったのかもしれないが、結果的に取締役までこれたのだからか、心が曲がったり捻くれたりすることはなかったのかもしれない。
彼のように一握りの取締役になれれば過去の苦労も報われると思うが、とにかく会社員で経営層に入るためには相応の犠牲を強いられることが最近よくよく見えるようになってきた。
若いころはあまり歯向かわず、中堅になったら後輩の面倒を見ながら実績を重ねる必要もあり、ごますりも必要である。人間裏表はあるが、器用にうまく柔軟に自分の心と折り合いをつけながら30年以上も毎日働くのである。
仕事が好きであればいいが30年以上も毎日働くのは現代版の奴隷制度とも言える。この奴隷制度に囚われている間は、友達や好きな人とと恋人になったり結婚ができる環境にあるのは幸せと感じなければならないのかもしれない。
<教訓>
・偉くならなければ会社員に選択肢はほとんどないが、器用にこなせば少しづつ選択肢は増える。
・苦労をして色々経験をすることで物事の解決方法の選択肢も増えてくる。